炊飯器の早炊き機能を使うと「ご飯がかたい、炊き上がりが水っぽい」と感じることはないでしょうか。
じつは、早炊きは通常の炊飯工程をカットして時間短縮しているため、普通炊きと比べ、味や食感が落ちてしまうのです。
そこで、早炊きでもご飯を美味しく炊くコツを山形県の小さなお米屋「阿部ベイコク」が解説します。
この記事の方法を実践するだけで、おいしく便利に早炊き機能を使いこせるようになります。
もくじ
この記事がお役に立てば幸いです。
「早炊き」と「普通炊き」の違いを比較
ごはんを短時間で炊くことができる炊飯器の「早炊き」機能。メーカーによって「特急・急速・高速・うま早・お急ぎ・そくうま」など、呼び方は様々です。
どれくらいスピードが違うのか?炊き上がりの味や食感に違いはあるのか?炊飯にかかる電気代は?と、気になりますよね。
まずは早炊きと普通炊きの「炊く時間、おいしさ、電気代」について比較してみましょう。
早炊き | 普通炊き | |
---|---|---|
①炊く時間 | 約20~40分 | 約50~60分 |
②おいしさ | △ | 〇 |
③電気代 | ほとんど変わらない |
①【炊く時間】約20~30分早く炊ける
一般的な炊飯器の「早炊き」と「普通炊き」の炊飯時間の目安は、次の通りとなっています。
- 早炊きモード :約20~40分
- 普通炊きモード:約50~60分
炊くお米の量や機種によって炊飯時間は変わってきますが、早炊きは普通炊きより約20~30分ほど早く炊くことができます。
最速13分で炊ける機種もある!
例えば、象印マホービン「炎舞炊き NW-LB10」の、炊飯モードごとの時間の目安は次のようになっています。
炊飯モード | 時間の目安 |
---|---|
特急 | 13分~21分 |
急速 | 26分~33分 |
ふつう | 51分~57分 |
熟成 | 67分~74分 |
「特急」「急速」という2種類の早炊き機能があり、最速13分という驚異のスピードです。じっくり時間をかける「熟成」と比べると最大54分も差があります。
②【おいしさ】やや劣る
味や食感に関しては、普通炊きの方がおいしく炊き上がります。その理由は炊飯工程の違いにあります。
普通炊きモードの炊飯工程
まずは普通炊きモードの炊飯工程から確認してみましょう。
- 吸水:弱火で加熱。水温を上げてお米に水を吸収させる
- 炊き上げ:水の温度をさらに上げて沸騰させる
- 沸騰維持:沸騰を持続させてごはんを炊く
- 蒸らし:炊きあがったごはんを蒸らす
普通炊きモードには「吸水」が組み込まれているので、炊飯器にセットする前の浸水(吸水)時間を設ける必要はありません。お米を研ぎ洗いしたら、すぐに炊くことができます。
また、ご飯が炊けたあとの「蒸らし」も自動で行ってくれます。完了ブザーが鳴ったら、ふたを開け、すぐに食べることができます。
早炊きモードの炊飯工程
一方、早炊きモードは通常の工程を短縮して、炊きあがるまでの時間を短くした機能になります。
早く炊けるというメリットと引き換えに「吸水・蒸らし」が不十分となり、かために炊き上がったり、余分な水分が飛ばす、水っぽくなる場合があります。
また、普通炊きモードのようにお米本来のうま味・甘みを十分に引き出すことも難しいです。そのため、味や食感は普通炊きモードより劣ってしまいます。
吸水って重要なの?
お米は、水分と熱を加えることで、やわらかく粘りがあるご飯になります。この変化を「デンプンの糊化(こか)」といい、お米の中心部にまで水が行きわたり、糊化がしっかり進んだご飯が良食味とされています。
蒸らすとどうなるの?
炊きあがったときフタをとらずに10~15分くらい蒸らすことで、蒸気がお米ひと粒ひと粒にグッと吸収され、しゃきっとふっくらしたご飯に仕上がります。
③【電気代】ほとんど変わらない
電気代は普通炊きモードで1回あたり約4~6円くらいです。
早炊きモードは炊く時間が短いので節電になりそうなイメージですが、カットされている吸水・蒸らしの工程ではそもそも大きな電力を必要としないため、実際のところ電気代はほぼ変わりません。
機種によっては、通常よりも高火力ですばやく沸騰させるため電気代が高くつくケースもあります。
電気代を気にするならば「省エネ」や「エコ炊き・エコ炊飯」などの機能を使うと効果的です。
また、炊飯器は年式による電気代の差はあまり大きくない家電ですが、10~15年前の古い機種の場合は、最近の機種に買い替えると大幅に節電できるかもしれません。
早炊きで、おいしく炊くには?
早炊きモードは「吸水・蒸らし」が足りないため、普通炊きモードより味や食感が落ちるというデメリットがあります。
裏を返せば、足りない分を補うことができれば、炊き上がりがワンランクアップします。次の方法を試してみましょう。
- 15分ほど浸水させてから炊く
- 「洗い米」を作っておく
- 食べる直前まで蒸らす・開けたらすぐほぐす
15分ほど浸水させてから炊く
お米を研ぎ洗いしたら、できるだけ浸水させてから早炊きしてみましょう。お米の吸水がグッと進み、次のような効果が期待できます。
- 硬さが減少し、粘りが増加する
- 甘み成分(還元糖)が増加する
- 水分の蒸発量が少なくなり保存性が向上する
ポイントは水の温度です。キンキンの冷水は吸水スピードが遅いため、20℃くらいの常温の水に漬けることです。
この方法は浸水時間=タイムロスとなってしまいますが、10分でも15分でも浸水させておくと炊き上がりがまったく違うので試してみてください。
「洗い米」を作っておく
洗い米(あらいごめ)とは、料理研究家の土井善晴さんが提唱するお米の洗い方です。
通常はお米を浸水させて吸水させますが、「洗い米」の場合はザルで水切りした状態で吸水させるのがポイントとなります。
- お米を研ぐ・洗う
↓ - ザルで水気をよく切り、30~40分ほどおく(吸水)
↓ - 炊飯器にセットし、炊飯スタート
すぐに炊かない場合は、ザルで水切りしたお米をポリ袋に入れて、冷蔵庫で2日くらいは保存できるそうです。
事前に洗い米(吸水した状態)にしておくことで、早炊きモードでもおいしく炊くことができます。
食べる直前まで蒸らす・開けたらすぐほぐす
早炊きは蒸らし工程が短縮されているため、炊飯完了ブザーが鳴った時点ではお米の表面に水分が残りやすく、ごはんがベチャっと水っぽい状態です。
食べる直前までフタを開けず、できるだけ高温をキープして蒸らしましょう。
また、フタを開けたら素早くほぐし、余分な水分を飛ばすこともコツです。ご飯のべたつきを抑えることができます。
最後に、なべ肌は熱くなりやすいので、なべ肌から少し離すイメージでご飯を山のように真ん中によせましょう。
美味しく・早くなら炊飯器の加熱方式もチェック
炊飯器の加熱方式は次の3つに分けることができます。
加熱方式 | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|
マイコン式 | 約5,000円~ | 本体底のヒーターで鍋底を加熱する仕組みのため、下部と上部で温度ムラが生じやすい |
IH式 | 約10,000円~ | 強い火力で鍋全体を加熱するため、ムラなく、すばやく炊き上がる |
圧力IH式 | 約20,000円~ | IH式に圧力機能を加え、より短時間でムラなく炊き上がる |
「美味しさ」と「早さ」両方を求めるなら、①圧力IH式、②IH式、③マイコン式の順になります。
さらに上位機種になると「可変圧力IH式」「スチーム圧力IH式」というのもあり、加熱方式は早炊き時間とごはんの仕上がりに大きく影響します。
少しでも早く炊きたいときは…
炊くお米の量を減らすことでも炊飯時間を短縮できます。
目安は今お使いの炊飯器が対応している合数の半分より少ないお米の量です。
(例)5合炊き炊飯器なら2.5合より少ない量
分量が少なければ少ないほど加熱時間が短くすむので、早く炊くことができます。
炊き込みご飯の「早炊き」はおすすめできない
具材や調味料などの塩分があるとお米の吸水が悪くなるため、炊き込みご飯を「早炊き」すると、お米の芯が残ったり、具材に火が通ってない、という失敗が起こりやすいです。
炊飯器の「炊きこみ」モードは、予熱時間が長く設定されているなど、具を入れて炊く用にプログラムされています。「炊きこみ」がない場合は、「普通炊き(白米)」モードを使いましょう。
それでもご飯が硬くなる場合は、夏場は30分~1時間、冬場は1~2時間程度、吸水を済ませてから、炊く直前に調味料を入れると改善されます。
また、具材を混ぜ込んで炊いてしまうと加熱ムラができてしまいます。調味料はよくかき混ぜ、具はお米の上にのせて炊きましょう。
具や調味料を入れて長時間の浸漬はNG
「炊きこみ」のタイマー予約炊飯はできません。理由は下記になります。
- 時間がたつと調味料が沈殿し、うまく炊けない
- 雑菌が繁殖しやすい
- 釜のフッ素加工が痛む恐れがある
具や調味料を入れたらすぐに炊飯しましょう。「普通炊き(白米)」のときもタイマー予約はNGです。
冷凍ご飯を作るなら「普通炊き」で
美味しいご飯は水分をたっぷり含んだ状態です。そのため、吸水工程が短縮されている「早炊き」は冷凍ご飯に向いていません。
時間に余裕があるときに「普通炊き」したご飯を冷凍しましょう。詳しくはおいしい冷凍ご飯を作るコツをご覧ください。