「解凍したご飯がベチャベチャする、すぐに固くなる…」
じつは、上手にご飯を冷凍保存できていても、レンジで解凍するときに失敗しているケースが少なくありません。
そんなあなたに、山形県にある小さなお米屋阿部ベイコクが「美味しくご飯を解凍する方法」をご紹介します。
電子レンジを使ったちょっとしたコツですので、誰でも気軽にお試しいただけます。
もくじ
この記事がお役に立てば幸いです。
失敗の原因は「ご飯の加熱しすぎ」かも!?
電子レンジで解凍したご飯がベチャベチャしたり、すぐに固くなってしまう原因のひとつが「加熱しすぎ(過加熱)」です。
電子レンジはマイクロ波で水分を振動させて、食品を加熱・解凍する仕組みになっています。
マイクロ波は「液体になった水分を温めやすい」という特徴があり、水は氷に比べ約8,000倍も加熱されやすいです。
例えば次の図のように、厚さが均一でない冷凍ご飯をレンジ加熱すると、厚い部分の中心は「氷」、薄い部分は「水」の状態になります。
このまま全体が温まるまで加熱し続けると、先に溶けた薄い部分は加熱されすぎて食感が悪くなってしまいます。
ご飯を解凍するときのコツ5つ
レンジ加熱では、解凍ムラを起こさないことが美味しさのカギとなります。次の5つのコツを紹介します。
- 一度に温める分量は300グラムまで
- 解凍直前まで冷凍庫から出さない
- 電子レンジ庫内の食品をおく位置を確認
- 「加熱モード」を使う(※解凍モードはNG)
- あたためは2回に分ける
また、ご飯の「冷凍方法」について詳しく知りたい人は、下の記事をご覧ください。
ステップ①一度に温める量は300グラムまで
電子レンジでご飯を解凍するさいは、少なすぎても、多すぎても、うまく加熱できない場合があります。
一度に温める量は「1個(約150グラム)」、多くても「2個(300グラム)」としましょう。3個以上必要なときは少し手間ですが数回に分けて温めると良いです。
- 中盛り:約150グラム
- 大盛り:約200~240グラム
ステップ②解凍直前まで冷凍庫から出さない
電子レンジの特性上、冷凍したご飯を冷蔵庫に移したり、常温で長い間放置すると均一に解凍できないため、冷凍庫から出してすぐの「カチコチの状態」をラップで包んだまま加熱していきます。
ステップ③電子レンジ庫内の食品をおく位置を確認
電子レンジは機種によって食品を置く位置が異なります。レンジの取扱説明書を確認しておきましょう。
- フラット型:庫内中央
- ターンテーブル型:テーブルの端
2個を同時にあたためるときは、同じ分量、同じ大きさで、重ならないように適正な位置(取説要確認)で加熱すると失敗しません。
ステップ④「加熱モード」を使う(※解凍モードはNG)
ご飯の解凍には「加熱モード」を使います。「解凍モード」は生状態に戻す機能なので、解凍ムラができてしまい美味しく温まりません。
「自動あたためモード」を使うときの注意点
赤外線センサー・重量センサー搭載機種は、センサーが正常に働くように次の点に注意しましょう。
- 庫内が十分に冷めた状態で使う
- 庫内の水滴は拭き取る
- 容器に入れずラップのまま置く(重さのある容器は使わない)
- ラップの重なりを下にして置く
「自動あたためモード」の場合はここで完了です。温め終わったらすぐにほぐして、蒸気を逃がしてください。うまく仕上がらないときはステップ⑤を「手動の加熱モード」でお試しください。
ステップ⑤あたためは2回に分ける
1. 加熱(1回目)
冷凍庫から出したてカチコチの冷凍ご飯をラップのまま電子レンジに入れ、箸でほぐせるくらいまで加熱します。
加熱時間は、次の表を目安に調整してください。※電子レンジの機種、冷凍ご飯の厚みや形で変わってきます
ごはん分量 | 500Wの場合 | 600Wの場合 |
---|---|---|
1個(150g) | 約1分10秒~1分50秒 | 約1分~1分30秒 |
2個(300g) | 約2分00秒~2分50秒 | 約1分40秒~2分20秒 |
2. ほぐす
ラップを外し、ご飯を耐熱のお茶碗に移し、軽くほぐします。お米の粒がつぶれないように優しく!
(この時点では温まりきっていない状態です)
ここで余分な水分が飛び、ご飯を均一に加熱することができます。多少手間ですが、冷凍ごはん特有のベチャつきをなくす重要なポイントになります。
3. 加熱(2回目)
お茶碗にふんわりとラップをかけて再度加熱すれば完成です。
(この方法でも水分が多いと感じるときは、2度目の加熱はラップなしでお試しください)
加熱時間は、次の表を目安に調整してください。※電子レンジの機種、冷凍ご飯の厚みや形で変わってきます
ごはん分量 | 500Wの場合 | 600Wの場合 |
---|---|---|
1個(150g) | 約1分50秒~2分30秒 | 約1分30秒~2分 |
2個(300g) | 約2分45秒~4分 | 約2分20秒~3分20秒 |
これで美味しいご飯の完成です。
「美味しくなくなる温度帯」を素早く通過しよう
冷凍ご飯は、次の温度帯に長くさらされるほど美味しくなくなります。
- マイナス5℃~マイナス1℃
- 約10~40℃
まず「マイナス5℃~マイナス1℃」は最大氷結晶生成帯と呼ばれ、氷の結晶が大きくなりやすく、食品に与えるダメージも大きい温度帯です。
次に「約10~40℃」は食材の酵素反応が活発になる温度帯で、色が悪くなったり臭いが出やすくなります。
この2つの温度帯を素早く通過させるスピーディーな加熱が美味しさを保つポイントになります。
電子レンジ加熱が1番スピーディー
ご飯の解凍方法は、蒸し器や湯せん、自然解凍などもありますが、加熱スピードを考えると「電子レンジ」がベストです。
方法 | 解凍・加熱時間 | 手間 | おいしさ |
---|---|---|---|
電子レンジ | 2~3分 | 〇 | 〇 |
蒸し器 | 10~15分 | × | △ |
鍋・フライパン湯せん | 10~15分 | × | △ |
自然解凍 | 数時間 | △ | × |
冷凍→冷蔵 | 数時間 | △ | × |
電子レンジは加熱時間が短い分、他の解凍方法よりも「美味しくなくなる温度帯」を短時間で通過できます。
時間も手間もかからず美味しく仕上がるのであれば、ご飯の解凍には電子レンジがベストと言えます。
電子レンジは機種ごとに加熱能力のバラツキがある
フジテレビ商品研究所の実験によると、5メーカーの5機種の電子レンジで「10℃の水200gを500Wで2分40秒加熱」したところ、最高は83℃、最低72℃と、10℃以上も差がでました。
これは電子レンジの能力に差があるからで、同じ分量の食品を同じワット数/時間で加熱しても、機種によっては加熱不足や過加熱が起こり得るということです。
ご飯を解凍する場合も同じで、例えば「600Wで2分」と書いてあっても、あくまで目安としてご家庭ごとに調整が必要になります。
こんな時は?
冷凍→解凍したご飯が美味しくない場合は「冷凍するとき・冷凍保存中・解凍するとき」の3つにわけて失敗の原因を探ってみましょう。
解凍したご飯が「べしゃっとする」
ベチャベチャになる場合は「ごはんの露+レンジ過加熱」かもしれません。「レンジでご飯を解凍するときのコツ」を順にお試しください。
解凍したご飯が「お団子みたいにくっついちゃう・固くなる」
冷凍するときに、ご飯をつぶさないように優しくラップで包みましょう。
また、解凍時の過加熱により固くなってしまうこともあります。「2回に分けてあたためる」をお試しください。
解凍したご飯が「パサパサ・粘りがない」
冷凍するとき、もしくは冷凍保存中に、ご飯の水分が逃げてしまっているのが原因かもしれません。「ご飯を美味しく冷凍する方法」をご確認ください。
解凍したご飯が「におう」
炊き立てご飯は臭わないのに、冷凍ご飯にするとなぜか臭う!という場合は、冷凍保存中の臭い移りが原因かもしれません。
じつはラップには原料が異なる3種類があり、このうち家庭でよく使うのは①と②です。
- ①ポリ塩化ビニリデン:においや湿気、酸素を通しにくい(サランラップ、クレラップなど)
- ②ポリエチレン:においや湿気、酸素を通しやすい(ポリラップ、ダイソーなど)
- ③塩化ビニル樹脂:器にくっつきやすく、熱に強い(スーパーのお肉のパックなど、業務用によく使われる)
ご飯の冷凍保存には「臭い移り・乾燥・酸化」を防ぐという点で①ポリ塩化ビニリデン製がおすすめです。
②ポリエチレン製を使う場合は、ラップで包んだあとに、ジップロックなどの保存袋に入れて冷凍しましょう。
ぜひこの機会にご家庭のラップの原料を確認してみてください。
ちなみに…、②ポリエチレンは安価で呼吸している野菜や果物の保存に適しています。